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思考や認知の変化について
「考えがまとまらない」「集中できない」「現実との区別がつきにくい感覚がある」など思考や認知の変化はさまざまなかたちであらわれます。これらの変化は強いストレスや生活環境の変化によって一時的に生じることもあれば精神疾患の症状としてあらわれることもあります。当院では現在の症状だけでなく
- いつ頃から始まったのか
- 生活にどのような影響が出ているのか
- ご本人様がどのような不安を抱えているのか
を丁寧にうかがいながら必要に応じて治療や支援についてご説明しています。
思考や認知の変化でみられる主なサイン
思考や認知の変化は急に強くあらわれる場合もあれば少しずつ気づきにくいかたちで進むこともあります。ご本人様が違和感を覚えることもあればご家族様や周囲の方が変化に気づくこともあります。以下のような状態が続いている場合は一度ご相談ください。
主な症状
思考のまとまりにくさ
- 話の筋道がそれやすい
- 会話中に内容が飛びやすい
- 自分でも何を話しているのか分からなくなる
- 物事を順序立てて考えることが難しい
現実との区別がつきにくい体験
- 実際にはない声が聞こえる
- 誰かに見張られていると感じる
- 周囲の出来事が自分に向けられているように思える
意欲や感情の変化
- 以前は楽しめていたことに関心が持てない
- 喜怒哀楽の表現が少なくなる
- 人と会うことが億劫になる
- 身の回りのことが負担に感じる
認知機能の低下
- 集中力が続かない
- 作業のスピードが遅くなる
- 段取りを立てることが難しい
- 忘れ物やミスが増える
不安・緊張・気分の落ち込み
- 強い不安や緊張が続く
- イライラしやすくなる
- 気分の落ち込みが続く
- 眠れなくなる
当院の治療方針
当院が大切にしていること
思考や認知の変化は良くなったり不安定になったりと波を伴うことがあります。そのため短期的な変化だけで判断せず、長期的な視点で支えていくことが重要です。ご本人様の状態や生活背景に応じて無理のない形で治療を継続できるよう状態に応じて継続的に支援を行っています。
治療の3つの要素
思考や認知の変化は単一の原因だけで生じるとは限りません。当院では「からだ」の面・「こころ」の面・「環境」の面の3つの側面から総合的に状態を把握することを大切にしています。症状の程度や生活状況に応じて薬物療法・心理的支援・生活面の調整などを組み合わせながら状態に応じた回復を目標として支援を行います。
「からだ」の治療
【生物学的側面へのアプローチ】
思考や認知の変化は脳の働きの変化やストレスなどが関係して生じることがあります。まずは十分な休養を確保し、心身の負担を軽減することが大切です。睡眠リズムの調整・生活習慣の見直し・栄養状態の確認など基礎的な生活の安定を整えることが治療の土台になります。必要に応じて薬物療法を行い、脳内の神経伝達物質(ドーパミンなど)の働きを調整することで症状の軽減を図ります。薬の種類や量は症状の程度や体質を考慮しながら慎重に調整していきます。
薬物療法について
思考のまとまりにくさ・幻覚・妄想・不安や抑うつなどの症状に対して抗精神病薬や抗不安薬・抗うつ薬などを状態に応じて使用することがあります。現在使用されている薬剤は、副作用に配慮しながら使用されていますが、体質や体調によっては口の渇き・便秘・ふるえ・眠気などがみられる場合もあります。
お薬を服用される際の大切なポイント
- 薬は副作用を考慮しながら少量から開始し徐々に調整することが一般的です。症状の状態によっては開始量を調整することもあります。
- 効果が安定してあらわれるまでに数日から数週間かかる場合があります。
- 副作用が気になる場合や体調に変化がある場合は自己判断で中止せず必ず医師にご相談ください。
- 症状が落ち着いた後も再発予防の観点から一定期間の継続治療が勧められることがあります。
- 薬物療法は症状を抑えることだけを目的とするものではなく、生活の安定を支えるための一つの手段として位置づけています。
「こころ」の治療
【心理的側面へのアプローチ】
思考や認知の変化があるとき、不安や混乱・孤立感を抱えやすくなります。そのため気持ちを話しやすい環境を整えることが重要です。
- 現在の困りごと
- 症状との向き合い方
- 再発予防の考え方
- 服薬や生活リズムの自己管理方法
診察では上記について対話を重ねながら整理していきます。ご本人様が病気や症状を正しく理解し、無理のないペースで生活を整えていけるよう支援します。
「環境」の治療
【生活・社会的側面へのアプローチ】
症状の安定には生活環境や社会的環境の影響も大きく関わります。
当院では必要に応じて
- 生活リズムの整え方の助言
- ストレス対処法の検討
- ご家族様への説明や助言
- 福祉制度や支援制度の情報提供
- 復職や社会復帰に向けた相談
リハビリテーションについて
精神科領域では社会生活機能の回復や維持を目的とした支援を「作業療法(OT)」と呼びます。必要に応じて医療機関や支援機関をご紹介することがあります。
リハビリテーションでは下記などを目標に取り組みます。
- ストレス対処法の習得
- 対人関係の練習
- 生活技能の向上
- 自分のペース配分の調整
対象となる状態・疾患
統合失調症
統合失調症は思考や感情・行動のまとまりが保ちにくくなる精神疾患の一つです。脳の働きが一時的に不安定になることで現実の受け取り方や考えの整理が難しくなることがあります。発症の原因は一つに特定されていませんが
- 遺伝的素因
- 周産期の影響(出生時のトラブルなど)
- 脳内神経伝達物質(ドーパミンなど)のバランスの変化
- 強い心理的・社会的ストレス
など、複数の要因が重なって発症すると考えられています。人間関係の悩みや進学・就職・転居などの環境変化がきっかけとなる場合もあります。統合失調症は症状に波がありながら経過することが多く、早期から治療と支援を受けることが重要とされています。
主な症状
統合失調症の症状は大きく「陽性症状」「陰性症状」「認知機能障害」に分けられます。また、不安や抑うつがみられることもあります。
【陽性症状】
本来は存在しない体験や考えがあらわれる状態です。急性期に目立つことが多いとされています。
- 幻聴(実際にはない声が聞こえる)
- 幻視や体感幻覚
- 被害的な内容の妄想(監視されている・追跡されているなど)
- テレビや周囲の出来事が自分に向けられていると感じる体験
- 思考がまとまりにくく、会話が脱線しやすい
- 強い緊張や興奮
- これらの症状はご本人様にとって現実的に感じられることがあります。
【陰性症状】
本来備わっている機能や意欲が低下する状態です。休息期・回復期に目立つことがあります。
- 感情の表現が乏しくなる(感情の平板化)
- 意欲の低下
- 人との関わりを避ける
- 身の回りのことに関心が持ちにくい
- 自室にこもりがちになる
- 周囲からは「元気がない」「やる気がない」と見えることもありますが、病気の症状の一部である可能性があります。
【認知機能障害】
考える力や情報処理の力が低下する状態です。社会生活に影響を及ぼすことがあります。
- 集中力が続かない
- 作業のスピードが遅くなる
- 記憶力の低下
- 段取りを立てることが難しい
- 細部にこだわりすぎて全体を把握しにくい
- 比喩や言外の意味を理解しづらい
- 整理整頓や料理などの手順作業が難しくなる
- 現在ではこの認知機能の回復や維持が社会復帰において重要とされています。
【不安・抑うつ症状】
急性期だけでなく、症状が落ち着き始める時期にみられることもあります。
- 強い不安や緊張
- イライラしやすい
- 気分の落ち込み
- 疲れやすさ
- 不眠
症状の経過について
統合失調症は次のような経過をたどることがあります。
| 前段階 | 疲れやすさ・違和感・不安などがみられる時期 |
|---|---|
| 急性期 | 幻覚や妄想などの陽性症状が強く出やすい時期 |
| 休息期 | 症状が落ち着き始める一方で、意欲低下や疲労が目立つ時期 |
| 回復期 | 少しずつ生活機能が回復していく時期 |
回復は一直線ではなく、良くなったり不安定になったりを繰り返しながら進むことがあります。患者様のペースにあわせ回復を急がせないよう、ゆっくり病気と付き合えるように支援を行います。
治療方法
統合失調症の治療では症状の安定と再発予防を目的に、状態に応じた支援を行います。
【薬物療法】
抗精神病薬を中心に必要に応じて抗不安薬や抗うつ薬などを使用します。効果が安定するまでには時間がかかることがあり体調を確認しながら調整していきます。
【心理的支援】
病気の理解を深め、症状との向き合い方や再発予防の方法について整理します。不安や悩みを一人で抱え込まないよう継続的に支援を行います。
【生活・環境調整】
生活リズムの安定・ストレス対処の検討・福祉制度の活用などを必要に応じてご案内します。社会生活への復帰や維持を見据えた支援を行います。