A1 | この2週間以上、毎日のように、ほとんど1日中ずっと憂うつであったり沈んだ気持ちでいましたか? | いいえ | はい |
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A2 | この2週間以上、ほとんどのことに興味がなくなっていたり、大抵いつもなら楽しめていたことが楽しめなくなっていましたか? | いいえ | はい |
A1とA2のどちらか、あるいは両方が「はい」である場合、下記の質問に進む。
この2週間以上、憂うつであったり、ほとんどのことに興味がなくなっていた場合、あなたは:
A3 | 毎晩のように、睡眠に問題(たとえば、寝つきが悪い、真夜中に目が覚める、朝早く目覚める、寝過ぎてしまうなど)がありましたか? | いいえ | はい |
---|---|---|---|
A4 | 毎日のように、自分に価値がないと感じたり、または罪の意識を感じたりしましたか? | いいえ | はい |
A5 | 毎日のように、集中したり決断することが難しいと感じましたか? | いいえ | はい |
A1とA2のどちらか、あるいは両方が「はい」で、A1~A5の回答のうち少なくとも3つ以上「はい」がある。 | ||
![]() うつ病の疑いあり ![]() |
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次の(ア)、(イ)のいずれか、あるいは両方が、 (ア)うつ病の症状のために、仕事や生活上の支障がかなりある。 (イ)死にたい気持ちについてたずね、死についての考え、または死にたい気持ちが持続している。 |
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あり![]() |
なし![]() |
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専門医療機関を受診する 現在受診中の専門医療機関があれば、ただちに受診する |
経過観察 |
「うつ病」は、ゆううつ感や無気力な状態が長い間続く大変辛い病気です。ただし、特別な病気ではなく、誰でもかかる可能性のある、ごく一般的な病気でもあります。
日本人の約15人に1人が「うつ病」にかかった経験があると言われており、決して珍しい病気ではありません。しかしながら、「気の持ちようで治るはず」と自分が病気であることに気付かないで治療をうけないまま放置していたり、からだの不調がなかなかよくならないで病院巡りをしている方が多かったりすることも事実です。
うつ病の苦しみが続くと、症状がひどくなり、手遅れになると自殺など取り返しのつかない事態におちいってしまう場合もあります。早期に専門医を受診し、適切な治療を受けることが必要です。
同じ「うつ病」でも、人によって、あらわれる症状や回復のペース、必要な治療計画は異なるものです。そのため、患者さんごとのオーダーメイド治療が必要になってきます。
ひとの脳は、こころやからだの働きを統括しており、意欲や気力、睡眠や食欲をコントロールしています。
うつ病は、この脳機能が疲れてバランスをくずしてしまう病気であると考えられています。脳のバランスを回復させる専門的な治療が必要になってきます。
うつ病は、「こころ」と「からだ」に様々な症状があらわれます。
うつ病は、「気分が重く沈みこむ」「何をやっても楽しくない」「生きていても辛いだけ」など、こころに症状(=精神症状)があらわれるだけでなく、「食欲がない」「疲れやすい」「よく眠れない」など、からだにも症状(=身体症状)があらわれてきます。
特に原因がないのに、こういった症状が続く場合は、専門医の診察を受け、治療をはじめることが必要になってきます。
うつ病は、ゆっくり回復していく病気です。
うつ病は、きちんとした治療を受けることで回復していく病気です。治っていく過程に多少波があっても、必ず回復に向かいますので、焦らずじっくり治療に取り組みましょう。
うつ病は、「脳」のはたらきの不調によっておこります。
誰でも「ゆううつだ」「落ちこんでいる」という経験を持ったことがあるでしょう。そういった気分の落ち込みは、何かしら良いことがあったり、時間がたてば元の状態に戻っていくことが普通です。
しかしながら、うつ病は、そういった気分の落ち込みとは異なり、脳内の神経伝達物質(セロトニンやノルアドレナリン等)の働きが低下して「こころ」と「からだ」の元気がなくなっています。
そのため、脳の働きを回復させる専門的な治療が必要になります。
神経伝達物質は、脳内のあちこちで「脳の潤滑油」として働いています。
この潤滑油が減ると、うまく脳が働かなくなり、うつ病の症状が出てきます。
うつ病は、ストレス状態が続いて脳が疲れてしまい、こころや活動のもとである脳内の神経伝達物質(セロトニン・ノルトリプチリン・ドーパミン)の働きが低下して起きると考えられています。自分ではストレスを自覚していなくても、知らず知らずのうちに負担がかかっている場合もあります。うつ病の回復と再発予防のためには、休養をとって脳の疲れをとって脳の働きを回復させると共に、ストレスとうまくつきあう方法を学ぶことが大切です。
誰でも、対人関係でトラブルがあったり、仕事で失敗した場合は、ゆううつになったり、落ちこんだり、食欲がなくなったりします。そういった不調は、たいてい日が経てば元通りになることが多いでしょう。
しかし、特に原因がないのに、不調が長引いたり(2週間以上)、繰り返しおこったりする場合は、もしかしたら「うつ病」かもしれません。
「こころ」と「からだ」の両方に、症状があらわれます。
これらの症状が出る・出ないには個人差があります。
うつ病になると悲観的になり「ずっと治らない」「もう自分はだめだ」と思いがちです。
そのため、どのように回復していくかを知ることが大切になってきます。
治り方や、回復のペースは人それぞれですが、おおよそ以下のような過程をたどります。
このように、うつ病は波がありながら、ゆっくり回復していく病気です。
「良くなった」「悪くなった」と一喜一憂せず、じっくり構えることが大切です。また周囲も、患者さんのペースにあわせ、回復を急がせないよう、ゆっくり病気とつきあえるようにサポートをしていきましょう。
「からだ」の面、「こころ」の面、「環境」の面に、それぞれ働きかけながら、症状の改善と再発予防をはかっていきます。さまざまな治療法を組み合わせることにより、治療効果が高まります。
うつ病は、脳を休め、バランスを整えていくことが必要です。そのため、適切な薬物療法によって、脳内のバランスを整えていくことが必要です。
また、患者さん自身の自然治癒力を最大限引き出すことを目的とし、充分な休養(睡眠)・栄養のある食事・適切な心身への刺激が保たれるように心がけることが必要です。
適切な薬物療法で精神の安定をはかります。
こころの病気の治療では、不安や悩みを、ひとりで抱えこまないことが大切です。そのため、医師との対話が治療の中で重視し、一緒に、解決法をみつけていきます。
また、病気の治し方、再発予防、服薬や生活習慣の自己管理方法などを助言・指導します。
うつ病は心身の治療だけでなく、患者さんの生活環境や社会環境を整え、ストレスを減らす方法を提案し、ストレスの対処法を助言・指導します。
当院では、患者さんご本人の生活力を取り戻すリハビリ指導を行うと共に、生活サポートの一環として、経済・生活支援制度や復職支援のための助言・指導や必要書類の作成などを行います。
うつ病に関わる3種類の神経伝達物質は、健康なときは脳内でバランスを保って分泌され、脳やからだの機能・活動を上手にコントロールしています。
この3種類の神経伝達物質には図のようにそれぞれ特徴があり、親しい人との離別や、過労などのショックな出来事や過剰なストレスが引き金となって、いったんバランスが崩れると、うつ病の症状となってあらわれるのです。
3種類の神経伝達物質の特徴と関わりを大別すると、不安や焦りは、セロトニンとノルアドレナリンが関係しています。積極性、気力ではノルアドレナリンとドーパミンが、また食欲、性欲、攻撃力ではドーパミンとセロトニンが主に関わっていると言われています。
セロトニン、ノルアドレナリン、ドーパミンの相互作用によって、脳やからだの機能のバランスは保たれています。
うつ病の方の脳内では、神経伝達物質(セロトニン・ノルアドレナリン・ドーパミン)の働きが低下しています。お薬の力をかりて、神経伝達物質を増やしたりバランスを整えたりすることで、うつ病の症状が、より早く、よりスムーズに回復します。
うつ病の代表的な治療薬である抗うつ薬は主にセロトニン、ノルアドレナリン、ドーパミンの神経伝達物質のシナプス前部のトランスポーター再取り込み阻害によって効果が発現するとされています。
また、抗うつ薬は、基本的には効果発現に数日から10日程度かかるため、不安や焦燥感があれば抗不安薬を、不眠があれば睡眠薬を併用することがあります。
分類 | 特徴 |
---|---|
三環系抗うつ薬 | 強力な抗うつ効果が期待されるが、副作用(のどの渇き、便秘など)も強い。 |
四環系抗うつ薬 | 三環系よりマイルドな抗うつ効果。副作用は少ないが眠気の出る場合も。 |
SSRI | 中等度の抗うつ効果。強迫症状・衝動行為などにも効果あり。吐き気や下痢などが出る場合も。 |
SNRI | 強力な抗うつ効果。意欲面に効果あり。血圧上昇・頻脈などが出る場合も。 |
※ここにあげた効果や副作用は、一般的なものです。ご自分が飲んでいるお薬の詳細については、主治医や薬剤師にお尋ね下さい。
こころの病気の治療では、不安や悩みを、ひとりで抱えこまないことが大切です。そのため、医療者との対話が治療の中で重視されています。
診察の中で、医師に、ご自分の症状や抱えている悩みを伝えながら、問題を整理し気持ちを安定させていきましょう。
特に、うつ病の方は、うつになりやすい考え方のクセ(例えば、完璧主義、他人にまかせることができない)を持っていらっしゃいます。そういった考え方のクセを、やわらげていくことが大切です。
主治医が直接、患者さんの心理面を、カウンセリング(対話)を通じて支援します。
うつ病になりやすい人の典型的な性格は、几帳面で人に気をつかいやすく、完璧主義で、やるとなったら徹底的にやらないと気がすまない、といった傾向があります。こうした性格は、社会の中では、むしろ望ましい性格と考えられています。こうした性格に合わせた、認知療法的なアプローチが有効です。
認知療法では、性格とは、物事を理解してそれに取り組むやり方、すなわち「認知」のスタイルであるととらえられています。うつ病になりやすい人では、以下の表に示す特徴的な認知パターンが目立つとされています。
うつ病になりやすい考え方のパターンを自覚し、うつ病になりやすい否定的な認知スタイルを転換し、幅広いストレス対処方法を身につけることが、うつ病の予防に役立ちます。
そのためには、こうした自分の考え方の特徴に気づき、こうした考え方をしていることを自覚するたびに、別の考え方をするように習慣をつけていくというやり方で、少しずつ考え方の癖や偏りを修正していくことができます。その方法は認知療法として定式化さています。
認知の分類 | 内容 |
---|---|
感情の合理化 | 感情的決めつけ。感情だけに基づいて結論づけてしてしまうこと。 「私は自分が情けないと感じている。だから私はダメな人間だ」「不安を感じている。だから失敗するに違いない」 |
過剰な一般化 | 一回だけの経験による事実から、広い意味を持つ間違った結論に至ること。 すなわち1つの良くない出来事があると「いつも決まってこうだ」とか「うまくいったためしがない」などと考える思考パターン。「いつも」「すべて」「絶対」という言葉や意味を含むのが特徴です。 「今日一つ仕事のミスをした、自分は仕事が出来ない人間だ」 |
全か無か思考 | 複雑な結果を、理由もなく両極端に分けてしまうこと。 完璧主義的な考え方で、「1つ失敗したら残りの99の成功に目がいかず、自分は失敗したダメな人間だ」 |
こころの先読み | 他人の考えを否定的に推論すること。 「挨拶をしたのに無視されたのは、きっと私が怒らせたからだ、悪いのは私だ」 |
自己関連づけ (個別化) |
何か良くないことが起こった時、自分に責任がないような場合でも自分のせいにしてしまうこと。 「今回のプロジェクトが失敗したのは全部自分の責任だ」「子どもが熱を出したのは自分のせいだ。自分がしっかりと体調管理をしなかったからだ」 |
すべきだ思考 | 自分自身に対して、かたくなにこうすべきだと考えてしまうこと。「部下は、上司の言うことを聞くべきだ」 |
マイナス化思考 | 早まった悲観的な考え。良いことを無視するだけでなく、何でもないことや良いことを悪いことにすり替えてしまう思考パターン。 「以前失敗したから今度も必ず失敗する」「仕事がうまくいったときには『これは何かの間違いだ』と思い、上手くいかないときには『これが実力だ』と自分を卑下する」 |
ラベリング | ちょっとした好ましくない特徴によって、すべてだめだと決めつけてしまうこと。「自分はつまらない人間だ」 |
薬を飲んでるのにいつまでたっても「うつ」がよくならない。それは慢性うつ病です。
うつ病は、早期発見・早期治療を行えば、本来、完全治癒する可能性が非常に高い疾患です。早期に発見され、軽症うつ病の段階で、早期に適切な治療を行えば、治療開始後3ヶ月で50%、6ヶ月で80%の方が完全に治癒します。しかし、治癒した段階(症状がなくなった状態)で早急に投薬を中止すると、非常に高い確率で再発を起こし、徐々に中等度・重度のうつ病へと悪化していきます。治療に6ヶ月以上かかっている場合や、薬の内服をすぐに止めてその結果再発を繰り返している場合は、慢性うつ病の疑いがあります。慢性うつ病や再発を繰り返す場合は投薬も、通常の三環系抗うつ薬・四環系抗うつ薬・SSRI・SNRIなどの抗うつ薬や抗不安薬、睡眠導入薬のみの投与では十分な薬理作用や治療効果を上げることができず、気分安定薬(リーマス・デパケン・テグレトール)による強化療法の併用や、NaSSA(レメロン・リフレックス)やセロトニン1aアゴニスト(タンドスピロン)などの新薬の併用、またクロナゼパム(リボトリール・ランドセン)・二環系抗うつ薬(レスリン・デジレル)などの内服が必要であるケースが増えています。
また、薬の内服や、完全な休養以外にも、認知療法・行動療法・対人関係療法・問題解決技法などの精神療法や、運動療法・アサーティブトレーニング・リラクゼーション療法・自己訓練法・鍼灸療法・無けいれん電撃療法などの「代替療法」も併用しなければ、やはり高い確率で再発を起こしてしまいます。
うつ病は、一度再発を起こしてしまうと、2度目の再発は50%、3度目の再発は70%、4度目の再発は90%、と非常に高い確率で再発を繰り返します。現在、問題とされているのは、治療効果が十分ではないのに、漫然と一般的な抗うつ薬を投与され、初発症状(最初にうつ病にかかったときに現れていた非常に辛い症状)ほど強い症状ではないが、軽度~中等度のうつ症状が1年以上持続している、いわゆる慢性うつ病(難治性うつ病・治療抵抗性うつ病・遷延性うつ病)の方が急増していることです。
下記に述べるような遷延化の要因を検討し、該当するものがあればそれに対する対応を考慮すべきです。
そうした要因として、双極性障害(双極性うつ病)、パニック障害や社交不安障害などの不安障害の併発、職場環境上の問題、家庭環境上の問題、現代の若者によくみられるうつ病(現代型うつ病、非定型うつ病)、パーソナリティの問題の関与、発達障害や愛着障害の関与、アルコール依存症の併存、身体疾患の併存などがあげられます。
従来は、うつ病は「心の風邪」であり、短期間で容易に治るという啓発がされたこともありましたが、最近の米国の研究(STAR*D研究)によれば、緻密な抗うつ薬治療あるいは認知行動療法を受けた数千人のうち33%は、1年経っても寛解に至らないことが明らかにされています。
当該データは「あなただけが特別に治りにくいわけではない」ことを理解すべきですことを示しています。諦めずに地道に治療を続ければ、多くの人が寛解に至るので、決して諦めてはいけない病気です。
2種類以上の作用機序の異なる抗うつ薬を十分量、十分期間使用します。無効な薬剤を使い続けることはせず中止とし、他剤に慎重に置換します。
抗うつ薬である程度の有効性(部分反応)がみられる場合には、増強療法を行います。現在、難治性うつ病の増強療法として保険適用があるものは第2世代抗精神病薬のエビリファイのみです。それが無効な場合には、リーマスの追加、あるいは、ほかの第2世代抗精神病薬(ジプレキサ、クエチアピン)の少量追加を試みます。またドパミンアゴニスト(パーロデル)や甲状腺ホルモン製剤(チラーヂンS)の追加を検討します。
最近急増している(うつ病外来の30%が非定型・新型うつ病)、従来とは症状がかなり異なり、気分反応性(自分が楽しいことや、興味のあること、親しい友人と会うことや、映画やパチンコに行ったりするときは非常に気分がよくなる現象)があるため、周囲からは単に怠けているだけ、甘えているだけにしか見えない全く新しいタイプのうつ病です。体が鉛のように重く、日常生活、学業的状況、職業的状況に著しい支障を来たします。1日10時間以上眠ることが多く、日中はかなりの眠気が出ます。ささいなことでイライラしたり、クヨクヨしたり、1日のうちで気分が激しく変動します。食欲は増加することが多く、通常は体重が増加します。
従来のうつ病は何かあると自分を責めることが多いのですが、新型では自分がうまくいかないのは周りが悪いという他責傾向があり、また自分がうつ病であるということを強く主張する傾向にあります。しかし、本人はかなり苦しんでいることが多く、自殺を繰り返す症例もかなりの頻度で見られます。
通常の抗うつ薬が効きにくく、気分安定薬(リーマス・デパケンR・テグレトール)による強化療法の併用や、NaSSA(レメロン・リフレックス)やセロトニン1aアゴニスト(タンドスピロン)などの新薬の併用,またクロナゼパム(リボトリール・ランドセン)・二環系抗うつ薬(レスリン・デジレル)を使用しますが、治療には長期間を要することが多いのが現状です。
高血圧、糖尿病、脂質異常症、肥満などに対して「生活習慣病」という呼称が提案されて20年以上が経ちます。
これらの疾患において、二次予防(早期発見・早期治療)に加え、一次予防(健康増進・発病予防)が重要との考え方は定着したものの、国民の実行度合いはまだ十分とはいえません。
また、生活習慣の乱れは、必ずしも「本人の怠慢」だけが原因とは限らない。
心身医学的にみると、ストレス環境下で不安や抑うつによる全般的な意欲の低下が生活習慣病の発症に影響を与えているケースが多くみうけられます。
生活習慣病と抑うつ・うつ病が併存することは、よく知られています。
両者の併存率(概数)は、本態性高血圧20-30%、糖尿病10-30%、脳卒中30%、心筋梗塞45%などと報告されいます。
中でも糖尿病とうつ病については双方向性の関係があるとされています(図)。
うつ病の経過中に糖尿病を発症した場合、治療に限らず物事全般への意欲が低下しているので生活の自己管理は難しくなります。まず、うつ病を治療して寛解をもたらす方が糖尿病の治療効果も上がりやすくなります。
一方、糖尿病患者におけるうつ病発症リスクは増加します。しかし、糖尿病患者が抱えるストレス要因は複雑で(表)、うつ病に至らないまでも、抑うつ状態に陥る可能性は高くなります。
特に、以下のときは注意が必要とされます。
同じ糖尿病患者でも、診断されたばかりの人、長く患って合併症の発症が切実な問題である人など、その範囲は幅広く、他の生活習慣病と比べて背景因子も複雑です。食事療法や運動療法は生活習慣病治療の基本ですが、当院では個々の患者さんの症状を理解して、心身医学的アプローチで治療や指導に当たります。
糖尿病患者のうつ病発症リスクの増加 |
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糖尿病⇔うつ病 |
社会・行動面の危険因子の関与 |
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神経・内分泌代謝異常 |
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分類 | ストレス要因 | 患者の気持ち |
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自己認識 | 罹病したことの捉え方 | 診断されたことで重大な病気の「患者」になってしまった |
社会との関係 社会からの影響 |
糖尿病に関わる医学情報 | 重い合併症(網膜症、腎症、足病変)が不安 |
周囲の人との関係 | 監視・干渉または特別扱いされ、互いにストレスフル | |
社気的な無知、偏見、差別 | 「生活習慣が乱れている」「ぜいたく病」などと非難される | |
喪失体験 | 今までできていた付き合い(会食など)に制限が生じる | |
医療に関わる負担 | 医療者との関係構築 | うまくできないと不信感、悔しさ、怒りなどの感情が生じる |
治療に伴う心理的負担 | 治療が必要だからと「自己管理という名の義務」を負わされる | |
治療に伴う経済的負担 | 定期受診のための医療費、交通費などがかさむ |
双極性障害は、あまり馴染みのない病名かも知れませんが、実は「躁うつ病」と呼ばれていた病気のことです。日本では躁うつ病と呼んでいましたが、用語を世界的に統一しようという流れのなかで、名称が変更され、双極性障害となりました。この双極性障害は、統合失調症(以前は精神分裂病と言われていた)と並んで二大精神疾患の一つで、気分障害のひとつでもあります。
双極性障害の“双極”とは、気分が両極端の状態に交互にぶれることを意味します。一方の極は躁状態といって、気分が爽快で、元気いっぱいで、意欲満々の最高の状態であるのに対し、もう一方の極はうつ状態といって、憂うつで気分が落ち込み、意欲がない最低の状態をいいます。双極性障害では、この躁状態とうつ状態が交互に繰り返して現れます。どちらの症状が先に現れるかは人によって違い、また生涯の発症回数も人によって異なります。