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町田市森野の心療内科, 精神科, 精神神経科, 神経内科, 内科

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職場不適応症

概要

職場不適応症とは、医学的疾患名ではなく、職場要因と勤労者の個人要因が絡み合って、精神症状が生じたり、就労に支障をきたしたりしている状態を指す慣用名です。

広義には身体疾患や精神疾患など個人要因単独による不適応も含まれますが、ここでは、職場要因と個人要因が影響を及ぼし合いメンタルヘルス不調をきたしている状態を中心に述べます。

精神症状(不安や抑うつ)、ストレス関連身体症状(頭痛、吐き気、めまい、ふらつき)、行動面の問題(出社拒否、嗜好品の乱用)を抱えることが多く認められます。

うつ症状を呈していても、休養と薬物療法という一般的なうつ病と不安障害の治療に加えて、職場の環境調整も必要になることが多くなります。

診断

本人の精神面や身体面の症状、行動面の問題に加え、仕事の業務量や質などの職務状況、職場での人間関係、職場以外での生活状況を確認し、診断を行う。

また、本人のもともとの特性やこれまでの適応状態、不適応の既往なども聴取しその後の対策に役立てます。

職場の産業医や保健師、上司や同僚、家族などの周囲の人からみた状況についての意見が得られると参考になります。

治療

精神疾患・身体疾患の治療

うつ病や双極性障害、統合失調症、不安障害などの精神疾患、生活習慣病、過活動膀胱、過敏性腸症候群などの身体疾患が主体の場合は、薬物療法などそれぞれの専門的加療も並行して行います。

業務負荷軽減・休養

業務量や質の問題が大きいと判断される場合には、業務負荷の軽減、業務分担や人員増員などが、職場の対人関係の問題が大きい場合には、その調整を指導します。

一般に、不適応状態になると業務負荷が相対的に過大になっていることが多く、負荷軽減を要することが多くなります。

また、十分な睡眠を含め休養が適切にとれるよう職場の環境調整や生活習慣の自己管理指導を行います。不安・抑うつ症状や疲労状態が軽度の場合は、時間外勤務の制限など業務負荷軽減を行って経過をみることもありますが、それでも改善が得られない場合や、症状が重度の場合には療養を要することが多くなります。必要に応じて診断書や情報提供書を作成し、職場の産業保健スタッフや上司などに説明や環境調整の依頼を行います。

職場の環境調整

適性を踏まえた配置転換や異動、周囲からのサポートが重要な場合もあります。興味・関心や適性を踏まえたキャリアデザインの見直し、対人関係の葛藤や情動コントロール、ストレス耐性強化を目的とした薬物療法や精神療法を行います。

図書館やリワークプログラムの利用

外来診療のみで復職困難な場合には、生活リズムや生活習慣の改善指導、図書館の利用、作業・運動などの段階的負荷強化,疾病の自己理解,復職準備性の向上などを行動計画やリワークプログラムで行うことが、復職に有効なことがあります。

休養、職場の環境調整、精神療法、薬物療法、生活習慣指導などの治療では適応状態が改善しない例や休職を繰り返す例では、特に社内や社外のリワークプログラムが考慮されます。施設により対象やプログラムの期間・内容が異なるので、それぞれの職種に合った施設を選択する必要があります。

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自律神経失調症

「肩こりがひどく、頭がズキズキ痛い」「歩くとフラフラする」「夜、なかなか寝つけない」「全身がだるくて何もする気がしない」これらは、どれも自律神経失調症の代表的な症状です。ストレス社会といわれる昨今、このようなつらい症状に悩まされる人が非常に増えています。

ところが、自律神経失調症は、病院で検査を受けても身体的な異常がみつからない病気です。そのため、「どこも悪いところはありません。あまり気にしないで」などといわれるだけで、適切な治療を受けられないケースも少なからずあるようです。患者さんにしてみれば、原因がわからないだけに、なおさら不安になってしまいます。また、周囲の人に理解してもらえないつらさもあって、気分が落ち込んだり、症状がますます悪化するという悪循環に陥りがちです。

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全般性不安障害

全般性不安障害は、ごく最近知られてきた病気です。日常生活では誰でも不安や心配になることがありますが、それには理由や根拠があり、なんとか耐えることができます。しかし、この全般性不安障害の不安はとりたてて理由もなしに、ふと、こころに浮かびます。対象を変えながら途切れることなく、次々と現れます。また、絶えず、何か悪いことが起こるのでないか、失敗するのでないか、といったような心配事に心が占領されて、気持ちのやすらぐときがありません。そしてこのとき特徴的なことは、心配事の内容が日常的な出来事で、仕事の責任、家の経済状態、家族や自分の健康、子供についてなどで、周囲の人からみれば取り越し苦労的なものが多いことです。そして、本人も心配しなくてもよいということがわかっていることが多いのです。

しかし、いくら大丈夫、問題ないと自分にいいきかせても心配をコントロールできません。いわば、取り越し苦労が1つ生まれると、その心配は次の心配を呼び寄せます。間断なく数珠つなぎになって心配事が現れる状態と考えて下さい。取り越し苦労とはいえ、常時、心配事をかかえていることは、大変なストレスです。イライラしやすく、リラックスできません。このような状態が長期間続くと疲れやすく、落ち着きがない、小さな刺激にも敏感、物事に集中できなくなります。心だけでなく、身体的にも筋肉が緊張して肩や首がこったり、筋緊張性頭痛、ふるえ、口の渇き、汗をかく、吐き気、下痢、頻尿、のどの違和感、ちょっとしたことにひどく驚く、筋肉のけいれんを生じます。

不安のサイン(図)

体の反応 行動面
  • 動悸がする
  • めまいを感じる
  • 顔が赤くなる
  • 汗をかく
  • 筋肉が緊張する
  • 不安になりそうな状況を避ける
  • 不安になってくるとその場を離れる
  • ものごとを完璧にやろうと確認を繰り返す
  • 危機が起きないようものごとを制限する
気分や感情 ものの考え方
  • 神経質になる
  • イライラする
  • 心配でたまらなくなる
  • パニックを起こす
  • 目前の危険を過度に大きく見る
  • 自分の力を過小評価する
  • 周りからの援助を期待することができないと考える
  • 悩んだ末に最悪の事態を考えてしまう
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強迫性障害

概要

汚れが気になり何度も手を洗ったりする、過度に掃除をする、鍵やガス栓を締めたかどうかが気になり何度も確認に戻ったりする、順番に並べる、数を何回も数える。これらは「強迫性障害(OCD)」の典型的な症状です。

強迫性障害の症状は、自己の意志に反して繰り返し執拗に湧き起こる思考「強迫観念」と、それを打ち消すための過剰な反復行動である「強迫行為」によって構成され、通常強い不安や苦痛を伴います。時間を浪費して、日常生活や職業的、学業的、社会的な活動に著しい障害を来たします。適切な治療が行われないと病状は時間とともに進行していき、日常生活を送ることが困難になります。

全国で200万人程度の方がこの病気にかかっていますが、治療を受けている方は半数に満たないのが現状です。治療はSSRI・三環系抗うつ薬・抗不安薬などの薬物療法に加え、精神療法(認知行動療法・暴露反応妨害法など)を組み合わせて約2年間程度の治療を行い、8割以上の方が回復します。

生涯有病率は2%前後で性差はみられませんが、男性の発症は青年期に多く、女性はそれよりも少し遅れる傾向があります。

人生早期に発症し社会性が障害されるため、適切な治療が行われないとその後の人生に深刻な影響を与えます。

経過・予後

重症になれば排泄や入浴など日常生活全般に時間を要し、一日中強迫症状にさいなまれることもまれではない生活障害の強い疾患であると言えます。従来は慢性の経過をたどる難治性の精神障害とされてきましたが、近年では認知行動療法とSSRIによる薬物治療が普及し、症状の改善が認められるようになってきました。

診断

OCDとは、強迫観念または強迫行為のどちらかが存在し、強迫症状のため生活機能低下が生じている疾患です。強迫症状は自分自身の思考あるいは衝動として認識されなければなりません。多くの場合は強迫観念や強迫行為を過剰で不合理なものであるとOCD患者は認識していますが、中には、この過剰で不合理であるとの認識が乏しい人も存在します。
強迫症状とうつ症状が同時に出現している際は、まずはうつ症状の治療を行い、うつ症状の改善後も強迫症状が残存している際は、強迫症状の治療を開始します。
近年、OCDと自閉症スペクトラム障害(広汎性発達障害、アスペルガー症候群)との関連が指摘されており、基盤に自閉症スペクラム障害をもつOCD患者さんも少なくありません。

治療

薬物療法
SSRIが第一選択薬です。抗強迫効果の出現には、うつ病に用いるよりも高用量、長期間の服用が必要であり、最高用量で10週間以上継続後に効果を判定します。反応が乏しい場合は、他のSSRIかアナフラニールに切り替えます。SSRIやアナフラニールで十分な改善が認められない際は、さらに少量の抗精神病薬を付加する方法が推奨され、それでも改善が認められない場合は抗精神病薬の変更を検討します。強い不安に対し、当初は頓用的に抗不安薬を使用することがあります。
薬物療法により改善が認められた症例は、服薬を中止すると再発することが多いため年単位での服薬の継続が望ましいとされています。
認知行動療法
強迫性障害の認知行動療法としてよく知られている技法は「曝露反応妨害法」です。この技法の適応となるのは、強迫行為で一時的に不安や不快感が軽減することによって、強迫行為が増悪・維持されるという悪循環を呈する症例です。
曝露反応妨害法
不適応的な不安反応を引き起こす刺激に持続的に直面することにより、その不安反応を軽減させる方法である「曝露法」と、不安や不快感を一時的に軽減するために行う強迫行為を行わずにすませる方法である「反応妨害法」を同時に組み合わせた方法です。不安刺激状況に直面することで初めは不安が一時的に増強されるが、直面し続けることにより不安反応は徐々に減弱されること、セッションを重ねるごとに不安反応の強度も徐々に減弱することが明らかにされています。
「反応妨害法」は、強迫観念により引き起こされる不安や不快感を一時的に軽減させる強迫行為を行わない状態を持続すると、強迫行為を行いたい衝動は時間とともに減弱していくという原理に基づいています。

併存疾患

OCDではうつ病や発達障害、パーソナリティ障害の併存が多くみられます。
また、児童・青年期のOCD症例ではチック障害、トゥレット障害の併存が高率に認められます。

患者さんや家族が理解してほしいポイント

  • 脳内の神経伝達物質(セロトニン)に関連する脳機能の異常であり、本人の性格や意志の弱さの問題ではありません。
  • SSRI薬は高用量で長期間の服用後に効果が出現するため、効果が感じられなくても自己判断で中止せず、服薬を継続することが必要です。
  • 家族が症状に巻き込まれ、強迫行為を代行したり、確認につきあったりすると、かえって強迫行為や回避行動を強めてしまうことがありますので、家族の対応が症状に悪影響を及ぼすことに留意してください。
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身体症状症(身体表現性障害)、病気不安症(心気症)、および疼痛性障害

概要

DSM-5(精神障害の統計・診断マニュアル)では、従来の「身体表現性障害」は「身体症状症および関連症候群」と改定されました。この中心が、「身体症状症」であり、「心気症」は「病気不安症」と、「疼痛性障害」は「著明な疼痛を伴う身体症状症」と改定されました。

身体症状症は、心理社会的ストレッサーなどが関与して、神経系の過敏性亢進、身体感覚増幅現象、および疾患知覚の変化などが生じ、医学的に説明困難な身体症状を過度に自覚するに至ると考えられています。

診断

以下の条件を満たすときに、「身体症状症」と診断します。

  1. 1つまたはそれ以上の、苦痛を伴う、または日常生活に意味のある混乱を引き起こす身体症状がある。
  2. 身体症状、またはそれに伴う健康への懸念に関連した過度な思考、感情、または行動が認められ、1.自分の症状の深刻さについての不釣り合いかつ持続する思考、2.健康または症状についての持続する強い不安、3.これらの症状または健康への懸念に費やされる過度の時間と労力、のうち少なくとも1つによって顕在化する。
  3. これらの症状が持続的にある(典型的には6ヶ月以上)。

治療

(A)身体症状症への対応

SSRI(デプロメール、パキシル、レクサプロ)、タンドスピロン、内科薬など薬物療法の効果も期待できます。

治療のゴールは、従来の「何らかの医学的原因→症状発現」という枠組みを脱出して患者さんが新たな適応様式を習得することであり、症状発現の成り立ちを患者さんが理解・受容できるよう、次の5つのプロセス(表)が必要となります。

プロセス 説明
詳細な病歴聴取 症状発現前の種々のイベント(出来事)やそれに伴う感情を詳細に把握します。
自覚症状の承認 患者さんが自覚する以上、医学的原因が明らかでなくても、その症状は患者にとってはreal(現実)であることを保証します。
丁寧な診察 症状の原因が明らかでないのは、不十分な診察による医師の「見逃し」ではないことを保証します。
検査結果などの説明 単に「異常はなかった」ではなく、どの臓器を調べて異常がなかったかを丁寧に説明します。
症状認知の見直し 上記から、「通常の」医学的原因がなくても自覚症状が発生しうることを説明し、原因の究明でなく、症状が生じないような生活様式を患者さんとともに考えていきます。
(B)疼痛性障害への対応

器質的原因のない疼痛には(A)の対応が必要になります。

さらにこれらの疼痛には「神経障害性疼痛」として、リリカ、ノイロトロピン、リフレックス、サインバルタ、三環系抗うつ薬(トリプタノール)などの効果が期待されます。患者さんの背景や特性、疼痛の生じる時間帯や日常生活の障害程度により使い分けます。

病気を理解するポイント

  • 患者さんが自覚している症状や痛みには医学的な原因が認められないこと。
  • 自覚している症状は患者さんにとっては苦痛を生じるものであると理解できること。
  • 医学的な原因がなくとも、心理社会的ストレスや、身体・神経の過敏性、過去の傷病体験などにより身体症状を自覚することがありうること。
  • 上記3条件を理解したあと、症状の原因究明はそれ以上行わず、症状が出ないような生活の仕方や適切な生活習慣を患者さんと主治医とが一緒に考えていくようにします。
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解離(転換)性障害

概要

解離性〔転換性〕障害はかつてヒステリーと称された障害群です。

意識、記憶、アイデンティティ(自己同一性)の感覚、身体運動、知覚の間の、正常であれば保たれている統合が破綻した結果、さまざまな精神症状や身体症状を呈します。

先行する心理的要因すなわち外傷的な出来事、解決困難な問題、対人関係ストレスなどと症状に経時的な関連が見出されますが、患者さんはこれをしばしば否認します。

児童虐待をはじめ幼少時の強い持続的ストレスが影響することがあります。

診断

健忘、遁走、昏迷、多重人格状態、けいれん、運動麻痺(歩行障害、失声、失立など)や知覚麻痺(視野障害、聴覚障害、温痛覚障害など)など顕著な症状を呈し、それぞれ解離性健忘、解離性遁走、解離性昏迷、多重人格障害(解離性同一性障害)、解離性けいれん、解離性運動麻痺、解離性知覚麻痺と診断されます。

診断は症状と身体所見の不一致、症状・訴え・検査結果の浮動性・状況反応性、その背景の(推測される)心理的要因とそれに対する不適応を評価してなされます。

身体疾患との鑑別、特に多発性硬化症、てんかん、神経変性疾患など症状変動のある神経疾患との鑑別診断は重要です。

統合失調症、気分障害などの前駆症状や随伴症状の可能性も念頭におく必要があります。

詐病やミュンヒハウゼン症候群のような作為症(虚偽性障害)との鑑別を要することがあります。

治療

治療は精神療法と薬物療法が用いられます。健忘、遁走、昏迷、けいれんなどの深刻な症状を認め、意思疎通や服薬が困難な場合、入院加療が必要となることもあります。精神療法は、患者の不安や苦痛を受容し、最終的に症状の成因を患者さんが理解し、対処法を身につけて症状を消退させることが目標になります。

(A)精神療法
  1. 治療初期:治療者の態度や評価に敏感であるため、丁寧で真摯な態度で接します。症状には患者さんにとってプラスの側面(2次的疾病利得)とマイナスの側面(例えば歩行困難)があること、後者の軽減をはかることを患者さんと話し合います。歩行困難となって生活が不自由になっても、上司と顔を合わせないですむことなどを話し合い、そのうえで歩行補助具の利用を検討します。症状をもたらした心理的要因が明瞭で現実に対応可能なものであれば、介入し改善を検討します。心理的要因が不明瞭な場合や解決困難な場合、過去の心的外傷に関連している場合には、症状との関連の明確化、直面化は避け、日常生活を安定化させるための具体的な対応を検討します。例えば、健忘が頻繁な場合には随時メモをとれる工夫をするなどです。
  2. 治療中期以降:契機となった心理的要因と症状との関連について患者さんの理解を進めます。心理的要因が軽度で環境調整が可能な場合、短期間で改善することもあるが、深刻な外傷体験があったり、対人関係障害が強い場合には長期的視点に立ち、徐々に改善することを目標になります。
  3. 特殊な治療:全生活史健忘などで催眠療法やアミタール面接が用いられることがあります。
(B)薬物療法
強い不安、抑うつなどに対して長時間作用型の抗不安薬やSSRIを中心とした抗うつ薬や抗不安薬を用い、心的外傷的体験のフラッシュバックや興奮などが生じる場合には抗精神病薬を用います。
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PTSD(心的外傷後ストレス障害)

危うく自分や他人が死ぬ状況や悲惨な状況、虐待に出会ったり、目撃してから自分がおかしい。それはPTSDです。

自分が危うく死ぬ、または重症を負うような状況、虐待を体験したり、他人がそのようになるのを目撃したりした後、非常に強い苦痛を感じながらそのことを何度も思い出したり、夢を見たり、思い出したときに汗をかいたり、心臓がドキドキしたり、全身の筋肉がこわばったりすることが1ヶ月以上続いており、そのことを思い出すような思考・感情・会話・行動・場所・人物を避けて社会的・職業的・学業的・日常的な様々な活動に大きな支障を来たしている場合、それはPTSDです。

治療はSSRI・三環系抗うつ薬・スルピリド・クロナゼパム(ランドセン・リボトリール)・抗不安薬などの薬物療法に加え、認知療法・不安階層表行動療法・暴露反応妨害法などを組み合わせて約2年間程度の治療を行い、約90%程度の方が回復します。

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摂食障害

概要

摂食障害とは、強いやせ願望や肥満恐怖、身体像の障害(体重や体型について極端に偏った感じ方を抱き、自己評価が体重や体型に過度に影響を与えます)などのため不食や摂食制限を呈します。さらに過食などの摂食行動異常と体重減少をもたらす嘔吐、下剤や利尿剤の乱用などの排出行動を生じ、これに種々の身体・精神症状を伴います。

これは主に著しい低体重(BMI18.5以下)で推移する「神経性食思不振症(拒食症)」と、過食と排出行動を生じているが、体重は正常範囲内か肥満に傾く「神経性過食症(過食症)」に分かれます。

摂食障害の患者さんの9割は女性で、多くは思春期以降に起こります。しかし近年では、患者数の増加と相まって思春期の女性だけでなく、思春期の男性、前思春期(10歳前後)や結婚後に発症するひとも増加し、病態も多様化しています。そして拒食症や過食症の診断基準の一部を満たさない非定型なタイプが増加しています。

原因としては、大人になりたくないという思春期の少女特有の葛藤や、母親との心理的分離が不十分であることなどがあげられます。また、対人ストレスや肉体的疲労、かぜなどからくる食欲低下、あるいは「やせていることは美しい」という社会的風潮に強く影響されて過剰なダイエットに走るなどがきっかけになることもあります。

摂食障害の合併疾患として、うつ病や、強迫性障害、パニック障害や社会不安障害などの不安障害、薬物やアルコール依存などに加えて、パーソナリティ障害を高率に併存することはよく知られています。これらを併存すると、臨床像が複雑化して治療が難しくなります。

治療目標は、摂食行動と体重の正常・安定化、身体合併症の改善、摂食障害の中心にある不適応的思考や行動、情動の正常化と再発予防です。本来の社会生活環境のなかで治療することを原則として、可能な限り外来治療を行うことが大切です。

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神経性食思不振症(拒食症)

概要

一般に拒食症ともいわれる神経性無食欲症は、思春期女子に発症しやすい疾患で、極端な節食による低体重や月経不順、低血圧、貧血のほか、心理面では、肥満恐怖、やせ願望、低体重なのに太っていると感じるボディイメージの障害などがみられます。種々の身体・精神症状や合併症を生じているにもかかわらず、病的にやせていると認識はありません。また肥満恐怖ではなく、胃部不快感や胃痛などを契機に拒食となる場合もあります。

診断

胃腸疾患、甲状腺機能亢進症(バセドウ病)など、体重低下をきたす疾患を除外します。肥満恐怖、体重の増加で自己評価が著しく下がること、過活動(エネルギーを消費のために動きまわる、長時間の運動)などの特徴的な症状から診断します。

治療

初発ケースでは、栄養補給、薬物療法による認知の偏りや身体症状の改善、発症時の心理的問題の解決や心理的成長の援助が中心となります。慢性例では、体重の維持、社会復帰援助などが中心となります。

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神経性過食症(過食症)

病態

自己嫌悪、怒り、抑うつなどの陰性感情を背景に、「むちゃ食い」が起きる病態です。自己評価と体重が連動するのは拒食症と同様であり、過食ののち、体重増加を防ぐための「代償行動」がみられます。これには自己誘発性嘔吐(口腔内に指を突っ込んでむりやり吐く行為)、下剤乱用などがあり、過食以外は極端な節食となっている場合がしばしばみられます。過食と代償行動のバランスにより、低体重の場合と過体重の場合があります。頻繁な嘔吐を伴う症例では、低カリウム血症からくる心機能不全や、胃酸逆流による食道炎や歯のエナメル質の酸蝕(さんしょく)(歯が酸でボロボロになる)に至ることがあります。

診断

特徴的な食行動により診断します。うつ病を伴う過食症という併存状態の場合も多くみられますが、季節性うつ病などの過食型のうつ病との鑑別が必要となることもあります。

治療

陰性感情だけでなく、血糖値の低下も過食の契機となります。肥満恐怖や食事が過食に結びつくことの恐怖から極端な節食となり、これによる血糖値の低下から過食が生じるという悪循環に至ることが多くみられます。薬物療法により認知の偏りや排出行動の改善を目視します。また心理面の問題にも取り組みます。規則正しい食生活を確立させ、過食と嘔吐や下剤乱用などを徐々に減少させます。体重の安定化とともに体重や体型のコントロールについての過大評価を修正していきます。最初から過食ゼロを目指すのではなく、少しずつ減らしてコントロール感を得られるよう援助します。

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心身症

病態

心身症は、「身体疾患の中で、その発症や経過に心理社会的な因子が密接に関与し、器質的ないし機能的障害が認められる病態をいいます。ただし、神経症やうつ病など、他の精神障害に伴う身体症状は除外する」と定義されています。心身症は独立した疾患単位ではなく、各診療科や各器官における疾患のなかで上記の条件にあてはまるものです。すなわち心身症は、疾患名ではなく「病態名」です。

心身症の代表的なものとして、過敏性腸症候群、過換気症候群、気管支喘息、緊張型頭痛、摂食障害、慢性疼痛などがあります。病名を記載するにあたっては、例えば、過敏性腸症候群(心身症)とします。

診断

心身症の診断は、病歴、現症、検査所見に基づく身体面からのデータと、面接による生活史の調査、心理テスト、行動観察、周囲からの情報などの心理社会面からのデータを総合して多軸的に行います。

心身医学的診断は除外診断と積極診断に大別されます。除外診断は、器質的疾患の有無や重症度および精神疾患の有無を明らかにすることであす。神経疾患、内分泌代謝疾患、膠原病、悪性腫瘍などによる部分症状として精神神経症状を呈する場合があるので、一般内科的諸検査を行う必要があります。積極診断は、器質的異常、機能的異常や病状と心理社会的要因との関連を評価することです。うつ、不安の評価にSDS、CES-D、STAIなどの心理テストが補助診断として用いられます。

心身相関の把握は、生活史と身体症状の間に時間的関連性が認められること、ストレス負荷により症状を誘発されること、治療経過のなかで対人関係や患者・治療者関係のあり方によって症状の変動が認められるによって判断されます。

治療

心身医学的治療は、患者・治療者間の信頼関係を作り、身体面、心理面、社会面から多面的に病態を把握して、その治療目標と治療方針を決定することが重要です。

最初に、さまざまな身体症状に対する治療を行い、そして不安、うつ、不眠などがある場合には、症状に応じて向精神薬を用います。

次に、食事、睡眠、運動などの生活指導を行い、さらに心理療法を行います。心理療法としては面接が主体であるが、認知行動療法、自律訓練法、交流分析療法、箱庭療法、内観療法、家族療法、集団療法などがあります。これらの治療法を患者の病態や治療段階に応じて用います。

​薬物療法
  • 不安、緊張、イライラ、抑うつ、不眠などの症状に対しては、抗不安薬、抗うつ薬、睡眠薬が適宜用いられます。一般にこれらの向精神薬は心理療法と並行して用いられます。
  • 抗うつ薬は脳内のエネルギーを補充するための薬です、睡眠薬で依存になったり、認知症になることはありませんので、主治医の指示に従って安心して服薬して下さい。

当院の診療方針

傾聴し、患者さんとの信頼関係を築くことから診療を始めます。

病態や向精神薬の説明において患者の不安を取り除くために、丁寧に、わかりやすく説明します。

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心因反応

心因反応とは、家族や親しい人の死、失恋、職場の対人トラブル、失業、大きな事故・災害など、心理的に大きなダメージを受けたときに起きる「一時的な心理的反応」のことをいいます。心因反応は大きく2種類にわかれ、ひとつは主に環境が原因で起こる反応と、もともとその人の性格の弱さ(ストレス耐性脆弱性)がもとになって起こる反応があります。ほかの病気の症状と大きく異なる特徴として、本人にとってきっかけとなる大きな出来事が生じ、それによる葛藤や悩みという段階を経ないで直接引き起こされるという点があげられます。

心因反応の3つのタイプ
  1. 驚愕・恐慌反応
    これは、非常に大きな出来事(災害・事故など)を目の当たりにしたときに、手足が麻痺して動けなくなる、腰をぬかしてしまう、理性を失って狂ったように走り回ったり、奇声を上げたりする状態のことを指します。
  2. 短絡反応
    これは、主に本人の人格の弱さやもともとの性格に関係しておこるもので、感情的な衝動によって直接行動に走ってしまうものをいいます。誰かを傷つけたり、何かを傷つけたりと理性を失って破壊的な行動にいたることもあります。
  3. 妄想反応
    外国など急に見知らぬ状況に置かれたときに「自分はだれかに監視されている」というような被害妄想を抱くことがあり、それを妄想反応(原始関係妄想)と呼びます。また、実際には誰にもばれていないのに、秘密がばれてしまったと思い込んだり(敏感関係妄想)、自分の権利が阻害されたと思い込み、被害妄想にとりつかれて裁判所などに訴えるといった行動にでることもあります。(好訴妄想)
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過敏性腸症候群(IBS)

概要

過敏性腸症候群は、主に大腸の運動、および分泌機能の異常で起こる病気の総称です。腸の粘膜に炎症やポリープ・腫瘍などがなく、ただ腸の働きが強くなりすぎることによって腹痛や便通異常(便秘、下痢、便秘・下痢を繰り返す交替型)などといった症状が現れる病気です。

つまり、腸自体が悪いのではなく、それ以外の何らかの原因で腸を動かす神経が刺激されるために、腸の運動が盛んになり腹痛などが起こるのです。

過敏性腸症候群は、人口の10~20%に認められ、その約10%が患者として医療機関を受診するといわれる頻度の高い疾患です。日本を含む先進国に多い病気です。
日本人では10~15%に認められ、消化器科を受診する人の3分の1を占めるほど、頻度の高い病気です。

発症年齢は20~40代に多く、男女比は1対1.6で、やや女性に多くみられます。

便通の状態により、便秘型、下痢型、交代型の3つに分類されますが、男性では下痢型、女性では便秘型が目立ちます。

原因

腸の運動は自律神経によってコントロールされています。口から入った食物は、胃を経て小腸、大腸と通過しながら消化・吸収されます。

そうして後に残ったものが、腸の運動によって直腸に運ばれると便意が起こるのですが、この間に自律神経のバランスが乱れることがあると、腸にけいれんが起きて排便のリズムが崩れ、腹痛や下痢、便秘といった過敏性腸症候群の症状がもたらされるのです。

自律神経のバランスを乱す主な原因は、緊張、不安といった精神的なストレスです。これがもとで過敏性腸症候群に一度見舞われると、「また起こるかもしれない」という不安な気持ちが生じ、それがまた同様の症状をもたらすという悪循環に陥って、長い期間くり返し悩まされることになります。

こんなことから、代表的なストレス病といわれています。
もちろん過敏性腸症候群の原因はストレスだけではありません。食生活や睡眠などの生活リズムの乱れも、腸の症状に大きく影響を及ぼします。

症状

過敏性腸症候群の具体的な症状としては、腹痛、おなかの不快感、吐き気、ガスが多く出る、などとともに、下痢や便秘をくり返します。

ただし、腹痛や便通異常を起こす病気はさまざまで、なかには大腸がんなどのように早期発見が必要な病気もありますので、上記のような症状があったら、まずは医療機関を受診して下さい。

過敏性腸症候群は、症状によって次の3つのタイプに大きくわけられます。

下痢型
突如として起こる下痢が特徴です。突然おそってくる便意が心配で、通勤や通学、外出が困難になります。また、そうした不安が、さらに病状を悪化させます。
便秘型
腸管がけいれんを起こして便が停滞します。
水分がうばわれた便はウサギの糞のようにコロコロになり、排便が困難になります。
交代型
下痢と便秘を交互に繰り返します。

いずれのタイプも、排便すると症状が改善すること、ストレスを感じると症状が悪化することが特徴的です。

検査と診断

診断の第一段階は、特徴的な自覚症状のパターンから、まずこの病気を疑うことです。次に、似たような症状を示す他の病気(腸のポリープやがん、潰瘍性大腸炎などの器質的疾患)がないことを検査で確認します。

胃透視・注腸検査・胃・大腸内視鏡・腹部超音波検査・腹部CT検査などを行います。これらの検査で異常がなければ特徴的な症状(腹痛、便通異常など)を確認し、要因となる自律神経失調症や精神神経症状の有無、精神的ストレスの関与を問診などで確認して診断します。

注腸検査や大腸内視鏡検査で大腸の働きが活発化していることを確かめる場合もあります。他に大腸の内部の圧を測定したり、性格・心理テストを行ったりして診断の決め手とすることもあります。

治療

過敏性腸症候群は、経過が長く完全に治ることが少ない病気です。
また、症状の完全な消失にこだわらず、日常生活のなかで病気とうまく付き合っていくことも大切です。

そのため、心身症として配慮してもらえる精神科や心療内科を受診することがおすすめです。

過敏性腸症候群の症状は精神的なストレス、生活の乱れによって引き起こされることが多いため、症状を改善するためにはこれらの要因の解消が基本となります。
過敏性腸症候群の症状はゆっくり改善することが多く、よくなってきたと実感するのに何ヶ月もかかることもしばしばです。根気強く治療をしていく必要があります。

腸管はストレスに反応しやすくなっているため、食事を規則正しくとり、繊維質を多く摂取し、必要に応じて薬を使用することによって、症状を著明に改善させることができます。
生活習慣指導や心身医学的治療と並行して行う薬物治療は、症状を和らげることができます。
整腸剤・下痢止め、ストレスや不安を和らげ、精神症状の改善を図るうえで、抗うつ剤や抗不安薬が有効な場合があります。

心身医学的治療としては、精神療法、自律訓練法、認知行動療法などがあります。

予防

過敏性腸症候群はストレス、生活の乱れが誘因となるため、それらの要素を取り除いてあげることによって、予防できることもあります。

暴飲暴食、喫煙、アルコールの多量摂取を避け、食生活の改善および生活習慣の改善を行います。アルコールは腸の粘膜をむくませ、下痢を引き起こしやすくなります。

アルコール以外では、カフェインや乳製品も過敏性腸症候群の症状を悪化させることがあります。コーヒー、紅茶、チョコレートなどはカフェインが含まれていますので、過剰摂取は控えましょう。

チーズや牛乳といった乳製品は、人によっては下痢や便秘を引き起こします。牛乳を飲むと下痢をしてしまうという方はやはり摂取を控えましょう。

摂取した方がよいものとしては、ビタミンとミネラルはストレスに対する効果を期待できますので重要。また腸の働きを良くするために食物繊維も有効です。

また、ニコチンは過敏性腸症候群の症状を悪化させることがあるので、タバコを吸う人は減煙や禁煙が必要です。
あまり精神的ストレスを抱え込まないよう、できることから少しずつ改善して、症状からの回復を目指しましょう。

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心因性頻尿

おしっこに行く回数が多くなる状態をさします。頻尿は通常、尿を排出する膀胱や尿道などの病気によりおこりますが、そうした病気がないのに尿の回数が多くて困っている方も少なくありません。

膀胱は「心の窓」とも言われ、緊張すると何回もトイレにいくというような、心理的な理由によっても起こります。

本来は、膀胱に尿が一定の量まで貯まると、強い尿意が生じます。しかし、ストレスや緊張など脳が過敏な状態にあると、弱い尿意を感じてトイレに行きたくなります。これを「心因性頻尿」といいます。心因性頻尿は、起きている間の頻尿で、通常、夜間の睡眠中に起きません。

心因性頻尿は、脳が過敏にならないようストレスを緩和し、膀胱に十分に尿を貯めてから排尿する習慣づけることで改善します。また、不安や尿意への過度なとらわれを軽減するSSRIや抗不安薬の投与を行います。

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月経前症候群

概要

月経前3~10日の間続く精神的あるいは身体的症状で、月経が始まるとともに減ったり消えたりするものをいいます

月経前症候群は女性特有の症状で少なくても80%以上の人が経験したことがあるといわれています。

昔と違い、現代は、晩産化・少子化のために一生のうちに迎える月経の回数が極端に増えたことが、月経前症候群の概念を生んだともいえます。月経前症候群は女性の現代病といえます。

原因

原因にはさまざまな説がありますが、不明です。
考えられている説として、卵巣ステロイドホルモンに対する標的器官(ホルモンの影響を受ける器官)の感受性の差が原因であるとするもの、水分貯留症状や低血糖類似症状からレニン・アンジオテンシン系の異常、耐糖能の異常があるとするもの、セロトニンなどの神経伝達物質の異常分泌があるとするものなどがあります。

精神的、身体的ストレスは月経前症候群の原因ではないとされていますが、月経前症候群を悪化させるともいわれています。

症状

月経前症候群の症状は人によってそれぞれで、にきび、胸の張り、睡眠障害、むくみ、便秘、下痢、頭痛、腰痛、食欲の変化、関節痛、注意散漫、イライラしやすい、気分不安定、心配性、憂うつなどがあります。

そして、仕事の作業能率が落ちたり、口論が増えたり、家にひきこもったり、家庭や職場で周りの人まで巻き込んでしまうなど対人関係にも悪影響をあたえることがあります。ただし、症状の現れ方には変化があり、月によって程度が異なることも少なくありません。

検査と診断

体調や気分の変化があって日常生活に支障がないか、仕事に影響が出ていないかなどの問診を中心に行われます。

月経前は誰もが多少体調が悪くなったりイライラしやすくなったりしますが、それらの変化が極端で日常生活に支障をきたす程重症と判断される場合のみ、「月経前症候群」と診断されます。

治療

薬物療法と非薬物療法があります。

薬物療法は内科的対症療法、ホルモン療法、向精神薬に分類されます。

  • 内科的対症療法としては利尿薬(ラシックス)、鎮痛薬(ロキソニン)、炭酸脱水酵素阻害薬(ダイアモックス)などが用いられます。
  • ホルモン療法としては低用量ピルを用いることがあります。
  • 向精神薬としては、SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)(パキシル、ジェイゾロフト、レクサプロ、デプロメール)が第一選択となっており、黄体期だけの投与でも十分効果がみられることがあります。
    漢方薬が有効なこともあり、試してみる価値があります。

非薬物療法としては、症状を調査して、その成り立ちをよく理解し、適切な食事、規則的な生活リズム、適度な運動、リラクゼーションなどにより生活習慣を改善します。

参考

月経が来たとたんに治ってしまうのが特徴なので、基礎体温をつけながら体調の変化を記録することで、自分でも月経前症候群なのか否かの見当をつけやすくなると思います。

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更年期障害

概要

更年期とは、閉経をはさんで前後10年の時期のことを指します。

卵巣機能が衰退しはじめ、消失する時期にあたります。閉経の平均年齢は約50歳なので、標準的には大体45歳~55歳が「更年期」ということになりますが、閉経年齢には個人差があるため、早い人は40代前半で更年期に差し掛かることもあります。

更年期に出現する心身の様々な症状の現れ方は人それぞれで異なります。

更年期症状が極端にひどく、日常生活にまで支障をきたしてしまう場合を更年期障害と言い、治療の対象になります。

原因

更年期障害は、エストロゲンの分泌が急激に減少することによって起こります。

エストロゲンは40歳頃より低下しはじめ、更年期障害はこのエストロゲンの分泌が急激に減少することによって起こります。

脳の視床下部にある自律神経中枢に影響を及ぼして自律神経失調症を引き起こします。

また、この年代の女性を取り巻く家庭や社会環境の変化からくる心理的ストレスが大脳皮質・大脳辺縁系に影響を与え、憂うつや情緒不安定などの精神症状を引き起こします。

この自律神経失調症状と精神症状が相互に影響し合って、更年期障害の病状を複雑にしています。

症状

更年期障害は、卵巣機能がまだ変動している時期にみられるもので、一定の時期が過ぎて卵巣機能が完全に低下し、全身の状態がホルモンの変化に慣れてくれば、自然によくなると考えられています。

様々な身体的症状および精神神経症状が現れるのが更年期障害の特徴です。

症状は、自律神経失調症状、精神症状、その他の症状に分けられます。通常、自律神経失調症状と精神症状は混在しています。

自律神経性更年期障害の代表的なものは、ホットフラッシュ(顔ののぼせ、ほてり)、発汗などの症状です。ホットフラッシュは閉経女性の40~80%に認められ、1~数年間続き、長期にわたる場合もあります。しかし、そのうち治療を要するものは25%とされています。

精神症状としての憂うつは、閉経女性の約40%に認められています。また、最近の調査では、日本の更年期女性の特徴として、ホットフラッシュよりも肩こりや憂うつを訴える頻度が高いことがわかっています。

検査と診断

更年期障害の疑いがある時は、専門医の診察を受け、まず血液ホルモン検査をすることをおすすめします。

そのため、一度だけの血液ホルモン検査では、エストロゲンが正常な値を示すことがあります。更年期と診断されるためには、老化した卵巣を活発にしようとして脳下垂体から大量に分泌される性腺刺激ホルモンの値が高いことを確認することが重要です。

また、更年期障害は、甲状腺や心血管異常などの内科疾患、整形外科疾患、脳神経外科疾患、耳鼻科疾患あるいはうつ病などの精神科疾患と類似した症状を示すことがあるので、複数の診療科の受診が必要になることもあります。

更年期障害の症状の程度は、クッパーマン更年期指数、簡略更年期指数などの質問用紙に答える方法によって、客観的に評価することができます。
それらの結果を元に、治療の必要性の有無を判断していくことになります。

治療

更年期障害の治療の中心は、ホルモン補充療法です。

更年期障害の程度は、本人の性格、精神状態、周囲の環境などから影響を受けます。

まずは、生活習慣・生活環境の改善を図るのが基本です。

ホルモン補充療法

ホットフラッシュ(のぼせ、ほてり)、発汗などを中心とする自律神経失調症状には、エストロゲンによるホルモン補充療法や自律神経調整薬などによる薬物療法が中心になります。
自律神経性更年期障害は、ホルモン補充療法により約1ヶ月で症状の改善をみることができます。

一方、社会心理的要因により誘発されると考えられている精神症状性更年期障害に対しては、向精神薬を主体にした薬物療法と精神療法が有効ですが、精神症状のなかにはエストロゲンの欠乏に由来するものもあり、ホルモン補充療法が効果的な場合もあります。

ホルモン補充療法には、子宮がある状態でホルモン補充療法のみを続けると、子宮内膜がんのリスクが高くなってしまうという欠点があります。
そのため通常、子宮のある方にホルモン補充療法を行う時は、黄体ホルモン製剤を組み合わせて使います。

また、平均5年以上ホルモン補充療法を行っている女性では、行っていない女性と比べて乳がんの発症リスクが1.3~1.4倍高くなります。
ホルモン補充療法中は特に、子宮がん検診・乳がん検診・一般の健康診断を必ず年に1回は一通りのチェックを受けるようにして下さい。

漢方薬治療
ホルモン補充療法の補助的役割やホルモン剤を使うほどではない場合、また、疾病によって、ホルモン補充療法を受けられない患者さん、ホルモン補充療法を希望しない患者さんには漢方薬治療をおこなう場合もあります。
精神科治療

症状の中心が不眠や気分の落ち込みなどメンタル面の不調の場合、睡眠導入剤や抗うつ剤・抗不安剤などの薬や、カウンセリングによる治療を併用していきます。

更年期はホルモン環境などの身体的な変化に加えて、心理的、精神的にも大きな変動のある時期で、閉経による女性性の喪失感、老化による容貌・容姿の変化、老化に対する不安、ガンや成人病に対する不安などによる心理的葛藤があります。

また、社会的にも夫の社会的活躍や子どもの成長による親離れによって家庭や社会からの疎外感や孤独感を味わったり、夫の定年問題、近親者や友人との死別、子どもの就職・結婚などによる淋しさを感じたりしやすい状況がうつ状態を助長することがあります。

参考

更年期は体力、性的能力、生殖機能は衰えますが、知的能力、情緒面ではピークを迎え、この年齢にある女性は人間として最も円熟し、能力を発揮できる時期でもあります。

適切な治療を受け、快適に過ごすようにしましょう。

更年期は誰もが経験するものなので、多少の体調不良があっても日常生活には全く支障がないのであれば、絶対に治療しなければいけないというものではありません。この時期は、心身の色んな不調が出やすいのと同時に、今まで多少無理ができていた人でも体力や抵抗力が落ちる年齢ですので、そのことを自覚した上で日常生活を見直していくといいでしょう

更年期の過ごし方は、全てにおいて今までの8割くらいにペースダウンすることがポイントです。

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チック症

まばたき、肩をすくめるや首をかしげるなど素早い動きが自分の意志とは関係なく出る症状は、「運動チック」といいます。

また、「あっ」など、短い声が出てしまう「音声チック」もあります。

両方の症状が重なって1年以上続く場合は、「トゥレット症候群」と診断されます。

いずれも子どもによくみられる症状です。

チックは家庭であらわれることが多いため、まず母親が気づきます。ひんぱんなまばたきや首ふりなどの動きは唐突で、ふだんの生活になじまないので奇妙にみえ、心配になります。これまで、チックは心理的な要因によるものと誤解されていました。そのため、子どもにチックの症状がみられると、多くの母親は自分のせいかと、不安になってしまうのでしょう。

原因は、脳の機能障害や遺伝など様々な説がありますが、中枢神経系の病気であることはわかっています。子どものうちにあらわれるのは、まだ脳が発達段階にあるからです。つまり、成長とともに、多くのお子さんは症状がなくなるか、軽くなっていきます。

何らかの精神的なプレッシャーやストレスがあると症状がひどくなるため、精神科の対象になっています。
症状は小学校低学年ぐらいから出始めるのが一般的で、動き方のパターンが変わったり、症状の軽い時やひどい時を繰り返したりしているうちに、思春期を過ぎると自然に治まってくる場合がほとんどです。まず治療の必要はありません。

本人や周りが気にすると症状が重くなってしまうので、余り気にせず、周りも見て見ぬ振りをするのが一番です。
治療が必要になるのは、恥ずかしくて外出ができないなど日常生活に支障が出ている場合や、重いトゥレット症候群の場合です。極少量の抗精神病薬(リスペリドン、ハロペリドール)を使うことがあります。心配でしたら、精神科の専門医に相談してみるとよいでしょう。

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不登校・ひきこもり

約12万人。2013年度の全国の不登校の小中学生の数です。

多くは友達や先生とのちょっとした人間関係のこじれがきっかけで、学校から足が遠のきます。親は突然のことに戸惑い、「とにかく行きなさい」と無理強いすると子どもを追い詰める。周囲に相談し、焦らず子どもの気持ちの回復を待つのが大切になります。

不登校とは病気など特段の理由もなく、年間30日以上学校を休むことを指します。

きっかけの上位は「友人との関係」、「生活リズムの乱れ」、「勉強が分からない」、「先生との関係」などの順になります。

子どもが不登校になった時、まず担任の先生へ相談するのが第一段階です。

スクールカウンセラーは児童生徒のの悩み相談に乗り、保護者や教職員に対応策などを助言します。

社会福祉士や精神保健福祉士による「スクールソーシャルワーカー」は貧困や就学環境などに問題がある場合に、児童相談所や福祉事務所などと連携し、解決に当たります。

不登校の原因が担任の先生である場合、自治体や教育委員会が開設する、教育相談窓口が有効です。

勉強する意欲はあるが、登校出来ない児童生徒向けに市区町村が「教育支援センター(適応指導教室)」を開設し、運営しています。学校に通う代わりに同センターに行き、勉強したりレクリエーションを楽しんだりします。できること少しずつ重ねていき自信の回復を図り、学校と連携して、最終的には学校への復帰を目視しています。

学校生活になじめない場合は、フリースクールに通うのも一法です。所属する学校長の判断で、フリースクールへの登校を小中学校での出席に振り替えも可能になります。そうすれば小中学校から卒業認定してもらえます。

いじめ・嫌がらせの改善や教職員の見守り強化など学校側の働きかけなどで再び登校するようになる児童生徒は年間3割程度です。心理的に元の生活に戻りにくい面があります。

不登校への対応として以下の4つが大切です。

  1. 無理に行かせようとしない
    ​子どもはギリギリまで頑張り、不登校になる。次に進む気持の整理が付くまで休養を認める。
  2. 信頼関係を築く
    子どもも「行かなくては」と思っている。「なぜ行かないの」「何が嫌いなんだ」と追い詰めては逆効果になる。
  3. 悩みを共有できる相談相手をみつける
    家族だけで悩みを抱えて孤立化しない。
  4. 体面にこだわらない
    大学や高等教育への進学だけでが自立への道ではない。親の価値観を押しつけず、子どもの気持ちを大切にする。

​不登校が長く続くと、ひきこもりに移行します。学校だけでなく、社会全体への不安や恐怖を抱えて、家から出られなくなるのです。ただし、その割合はけっして高くはありません。不登校からひきこもり状態になるのは、およそ3割の子だといわれています。それ以外の7割の子は、なんらかの形で社会と関わっていきます。大人は子どもが不登校になると将来を悲観しがちですが、全人的な治療を行えば、将来は決して暗くはないのです。

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アルコール依存症

 

概要

「節度ある適度な飲酒」とは「1日平均20g程度の飲酒」であり、「多量飲酒」は「1日平均60gを超える飲酒」です。ここでいう60gは、酒に含まれる純アルコール量で、だいたいビール中ビン3本(1,500ml)、日本酒3合(540ml)、25度焼酎300mlに相当します。
アルコール関連問題(アルコールに起因する健康問題や社会問題)の多くは、この多量飲酒者が引き起こしていると考えられています。

【節度ある適度な飲酒量(純アルコールにして20g/日)】

ビール (アルコール度数5度)なら 中びん1本 500ml
日本酒 (アルコール度数15度)なら 1合 180ml
焼酎 (アルコール度数25度)なら 0.6合 約110ml
ウイスキー (アルコール度数43度)なら ダブル1杯 60ml
ワイン (アルコール度数14度)なら 1/4本 約180ml
缶チューハイ (アルコール度数5度)なら 1.5缶 約520ml

アルコール依存症は治療しないで放置しておくと、体の病気や、社会的な問題を併発しながら、長い時間をかけてゆっくりと進行していき、必ず死に至ります。 しかし、断酒を続けていけば、健康な一生をまっとうすることが可能です。

一人のアルコール依存症者のまわりには、数人の酒を飲まない病人が出るといわれています。 人間関係が破綻しながら、進行して行くのが、この病気の特徴です。

この病気はアルコール飲料の反復摂取により生体とアルコールの相互作用による脳疾患であり、かつ生物-社会-精神の連環障害といえます。 したがって、治療には多次元的な洞察とアプローチを必要とします。

 

合併症・併存疾患

アルコール依存症には、脂肪肝、肝炎、逆流性食道炎、膵炎、高血圧症、高尿酸血症、低タンパク血症、貧血など様々な身体疾患や、自律神経症状や不眠症などを合併します。多くのアルコール依存症の患者さんが、依存症状ではなく、こうした合併症を主訴に一般の内科を訪れることです。しかし一般医療では、これらの症状の治療だけになってしまいがちです。それは、再び飲める体にする、つまり患者さんの再飲酒の手伝いをすることになってしまいます。

アルコール依存症は双極性障害やうつ病、不安障害などの精神疾患に加えて、基盤に発達障害やパーソナリティ障害が併存しうるため、精神科専門医療機関への受診が望まれます。

 

性・年齢の影響 

アルコール依存症は、性・年齢により症状等に差が認められます。
まず、一般に若年アルコール依存症では、精神医学的合併症の有病率が高く、アルコール依存症の早期発症の原因のひとつになっています。
高齢者の場合には、肝障害、脳血管障害などの身体合併症や、認知症などを伴っていることが多くみられます。


一方、アルコール依存症は男女でも差がみられます。体重あたり同量飲酒しても、女性の肝障害が重症化しやすいことはよく知られています。
男性に比べて女性の方が短期間でアルコール依存症に発展する傾向があります。

 

心理特性

アルコール依存症の心理的特徴として、「否認」と「自己中心性」があげられます。アルコール依存症の治療は、本人がまずアルコール問題の存在を認め、その問題を解決するためには、断酒を選択するしかないことを受け入れることから始まります。したがって、否認に対する適切な対応は、治療の成否を決める大きな要因となります。

否認は、本人が問題をまったく認めないか、または過小評価する状況を指します。多くのアルコール依存症の患者さんがこの特徴を示します。具体的には、嘘をつく、他と比較して自分の問題を小さくみせる、揚げ足をとる、ふてくされる、理屈をつける、などとして表現されます。

また、自己中心性とは、物事を自分に都合のよいように解釈し、ほかの人に配慮しないことです。これらの心理的特性は、飲酒を続けるために後天的につくりあげられたものであることがほとんどです。

 

精神医学的問題

病的飲酒パターンになると、飲酒を維持する工夫や飲酒の阻害要因を乗り越える努力が始まります。この工夫や努力が「探索行動」に当たります。飲酒を取り繕う嘘、酒代を借りる口実作り、人目を避ける隠れ飲み、酒瓶隠し、隠し金を作ります、飲酒を妨げる人への暴言・暴力などがみられます。探索行動には後ろめたさや罪意識や飲酒欲求に圧倒された無力感や敗北感が伴います。この感情体験は自己評価感情を下げる一方、探索行動は本人と家族や周囲の人との間に緊張や対立など葛藤状況を生じさせます。それゆえアルコール依存症は本人のみならず家族や周囲の人に軽重の別はありますが、精神医学的問題を引き起こします。

 

社会的問題 

アルコール依存症の患者さんは、多くの家族的・社会的問題を引き起こします。最近問題になっている常習飲酒運転者の多くは、多量飲酒者かアルコール依存症の患者さんです。またアルコール依存症は、自殺、不慮の事故、家庭内暴力、虐待、家庭崩壊、職場における欠勤や遅刻、失職、借金など多くの社会問題に関係しています。

 

薬物療法

多訴、易怒性、攻撃性、易刺激性、不安、焦燥、抑うつ、不眠などの症状に応じた薬物を選択します。情動安定薬のバルプロ酸ナトリウム、抗うつ薬ではSSRIやSNRI、睡眠導入薬の代用としてミアンセリン、ミルタザピン、レボメプロマジン、クエチアピンなどを用います。睡眠導入薬では非ベンゾジアゼピン(BDZ)系睡眠導入薬のゾピクロン、エスゾピクロン、ゾルピデムを用います。抗酒薬はシアナマイドを第一選択として使用します。最近では飲酒欲求に直接作用するようなまったく新しいタイプの断酒補助薬として、レグテクト(アカンプロセイト)を処方出来るようになりました。

 

心理・社会的寮法

再飲酒は治療中断の危機です。再飲酒には自責感、無力感、敗北感、罪責感、自暴自棄を伴います。その感情に共感し支持的精神療法で治療関係を維持することが肝要になります。

 

経過・予後 

断酒すれば進行は阻止され、経済的・社会的・家庭的・身体的問題も改善します。しかし、アルコール依存症は気づき難く、気づいても断酒は容易でありません。断酒の失敗を繰り返しながら経済的・社会的・家庭的・身体的障害が次第に深刻となります。

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パーキンソン病

概要

日本人の有病率は推定で10万人あたり120~150人です。高齢化とともに今後も増えていくことが予想されます。

パーキンソン病は、脳や体に張り巡らされている自律神経の神経細胞が変性(徐々に衰える)する病気です。中脳にある「黒質」という小さい部分の神経細胞が変性すると、神経伝達物質(ドパミン)の産生量が減り、脳の指令を全身の神経にうまく伝えることができなくなって、さまざまな運動症状が出て来ます。

遺伝素因にいくつかの環境因子が加わることで発症するとみられます。

パーキンソン病は、初期にはなかな気づきにくい病気です。ご家族や周囲が気づくケースもあります。普段とは異なる変化や身体の不調(表「受診のきっかけとなる症状」参照)が感じられたら、早めに精神神経科や神経内科を受診されることをおすすめします。

症状

運動症状:特徴的な以下の4大運動症状があります。

  • 振戦(しんせん):ふるえです。パーキンソン病の初期症状として多くの患者さんにみられ、全体の70%の方がこの症状を抱えています。ふるえは、主に手足に起こり、特徴的には手を膝の上などにおいて静止させている時にふるえます(静止時振戦)。
  • 筋固縮(きんこしゅく):こわばりです。筋肉が固くなり、肘や手首、手指、足の曲げ伸ばしがスムーズにできないなどの症状がでます。
  • 無動・寡動:身体の動きが遅くなります。動作が鈍く、動き出すのに時間がかかり、また顔の表情が乏しくなり(仮面様顔貌)、低い声で単調なしゃべり方になります。
  • 姿勢反射障害・歩行障害:身体のバランスが上手くとれず、倒れやすくなる、歩き始めの一歩が踏み出せない(すくみ足)。小刻みでよちよちした感じで歩く(少歩症)などがみられます。

非運動症状:運動以外の症状の中には、パーキンソン病に比較的特徴的な症状もあり、パーキンソン病に似た他の疾患との鑑別に用いられます。嗅覚障害、便秘、レム睡眠行動異常症は、運動症状が現れる早期に、あるいはそれに先行して現れることがありますので、早期診断に役立つ可能性があります。

  • 自律神経障害:これが心血管系に影響してくると、起立性低血圧(立ちくらみ)や食後性定血圧を起こします。便秘や頻尿などを起こすこともあります。
  • 精神障害:抑うつ、不安、無関心などが現れることもあります。進行期には、幻覚(幻視)や妄想が出現します。
  • 睡眠障害:寝付きが悪く(入眠困難)、朝早く目が覚めてしまう(早朝覚醒)、レム睡眠時(浅い睡眠相)に異動行動を起こすレム睡眠行動異常症もあります。
  • 嗅覚障害(嗅覚低下):パーキンソン病に特徴的な症状で、他の疾患との鑑別に役立ちます。

治療

早期の診断と適切な治療により、多くの患者さんは健常者に近い日常生活が送られます。そのためにも、早期発見・早期治療が大事です。

患者さんにあった薬を早期から使用して、異常になっている脳内の神経回路網をなるべく正常に戻す方が良いということがわかってきています。正常になると、リハビリが可能になり、治療効果も出てきます。

  • 薬物療法:治療の基本
  • 手術療法:薬物療法が限界に来た場合、あるいは副作用のために服薬が困難な患者さんなどが対象となります。
  • 運動療法(リハビリテーション):運動機能の維持・回復のために欠かせない療法です。リハビリを同時に行うことで、進行を遅らせたり症状の軽減をっせることができます

家族のサポートの仕方

パーキンソン病と診断された当初、患者さんは特に動揺します。ご家族はまず、患者さんの不安やとまどいを理解し、温かく見守ってあげることが大切です。療養にあたっては、ご家族によるサポートは非常に大事になります。

病気や治療法についてご理解いただき、服薬管理や症状の変化などに気をつけていただくとよいと思います。

病気が進行していくと、患者さん自身、できなくなることが増えてきます。しかし、ご家族はできないところを手伝ってあげるという程度にとどめ、患者さんの自立をサポートしてあげることが大切です。ご本人がやりたいと思うことは積極的にやらせてあげるようにしましょう。仕事や旅行などもできる範囲でやる分にはやってもかまいません。

【受診のきっかけとなる症状】

  • じっとしていると手足がふるえる→振戦
  • 歩幅が小さくなった→小刻み歩行
  • 歩いていると速歩で前のめりになる→前傾姿勢
  • 足が前に出ない
  • 足を床にすって歩く→すり足歩行
  • 歩くのが人より遅くなった→無動
  • 最初の一歩がなかなか出ない→すくみ足歩行
  • 字が上手く書けなくなった、小さく詰まった字を書くようになった
  • 服が着にくくなった、ボタンを上手くはめることができない
  • 声が上手く出せない、話し方に抑揚がなくなった
  • 飲食物が上手く飲み込めない→嚥下困難
  • 歯磨きが上手く出来ない
  • ベッドから起き上がるのに時間がかかる
  • よく転ぶようになった
  • よだれが頻繁に出る
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ドクターショッピング

診断や治療に納得できず、何カ所も医療機関をたずね歩くことをドクターショッピングといいます。
身体がだるい、疲れやすい、やる気が出ない、頭が重い、肩が凝る、動悸がする、息苦しくなる、めまいがする、腰が痛いなど、原因不明の症状を抱えている人がいます。

内科、耳鼻科、脳外科、整形外科など身体科の診療において、原因不明、すなわち症状の原因を医学的に証明できない、といったようなことは以外と多く見受けられます。

患者さん側からすれば、現実に自覚症状があるので、大いに問題ありなのに、医療者側にすれば何ら問題ない、ということになってしまいます。

患者さんは、医師から異常なしと言われてはしたものの、その言葉を鵜吞みにはできない、そんなはずはない。どこか悪いところがあるはずだと思い悩むことになります。

医療の現場で、次のような診療風景に出くわすことがあります。
ある患者さんは頭痛や肩凝りに悩まされており、胃に不快感を覚えることもある。もっとも気掛かりなのは頭痛だったので、まず脳外科を受診した。そこで頭部CT検査を受けたが、検査結果に問題はなかった。だが、半信半疑で納得がいきません。なにしろ、現に頭痛は起きているのです。

患者さんを診るとき、「疾患だけ」を診るのではなく、「その人」を生物的、心理的・倫理的、社会的の各側面から総合的に診ること「全人的医療」が大切になります。

ドクターショッピングを続けている間の患者さんの経済的や時間的浪費は、その人の日常生活に支障をきたします。

たとえドクターショッピングが終演を迎えても、医療に対する不満や不振、不安などが蓄積されており、これがストレスとなって残ります。

町田メンタル内科クリニックでは、この「全人的医療」を目指した治療を行っています。

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