日常生活において、誰しもストレスに直面します。家庭では、夫婦の不和や子どもの教育問題、職場では人間関係の悩みや過重労働、転勤、退職などです。そしてこれらのストレスにうまく適応できなくなると、しばしば身体的、精神的な症状が出てきます。たいていの場合は一定範囲内にとどまり短期間でおさまりますが、時と場合によっては予想以上に重くなり「病的な」レベルに達することもあります。すると仕事や学業、家庭生活に悪影響が及びます。
このような生活のストレスに起因する過剰反応を適応障害といいます。健康な状態と病気の状態の境目に生じる症状ともいえます。
適応障害の症状は3つに分けられます。精神症状、身体症状、社会的問題行動です。精神症状として代表的なものは、抑うつ症状と不安症状です。頭痛や肩こりといった不定愁訴、さらに不眠などの身体症状が出現することも多いです。問題行動がみられる場合もあります。遅刻欠勤のような目立たないものもあれば、ギャンブルによる乱費やアルコール乱用、さらには出社困難や離婚といった大きな問題に至ることもあります。まれに逃避的に自殺念慮を示すこともありますが、これは多くの場合、専門的治療を要するレベルです。適応障害は生理的反応ともいえます。
医学的に鑑別できる検査の異常はない場合がしばしばですが、身体症状に関しては検査が必要となることがあります。胃痛や倦怠感などに対する医学的所見がみつかるケースがあり、その場合は心身症として身体疾患の治療を並行しなければならないからです。心身症を合併しているケースの多くは精神症状も重くなります。よって、心身両面からの診療を行う必要があります。